
乳がん治療によって失われたり変形したりした乳房の形を回復させる「乳房再建」は、患者さんの生活の質(QOL)を高める上で非常に重要な治療法です。日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会は、2012年の設立以来、日本乳癌学会と日本形成外科学会が協力し、乳房再建に関する様々な取り組みを進めてきました。しかし、現状として、日本における乳房全切除後の再建率は約13%と、欧米や韓国の50%と比較して低い水準にとどまっています。これは、乳房再建に関する情報や医療機関へのアクセスが地域によって大きく異なることが一因と考えられています。特に、地方では再建の選択肢を知る機会が限られたり、適切な医療機関が近くにない場合があります。重要なのは、単に再建率を上げることではなく、再建を希望するすべての患者さんが、自身の希望に沿って最適な選択ができる環境を整備することです。
近年、乳がんの薬物療法は目覚ましい進歩を遂げており、将来的に手術を必要としない患者さんが増える可能性も指摘されています。しかし、現時点では手術が不可欠なケースが多く、その際、がんを確実に切除することは当然のことながら、手術後の乳房の見た目や形を「いかにきれいに整えるか」という視点も非常に重要です。なぜなら、乳房の形状は患者さんのQOLに直接影響を与えるからです。これは、乳房全体を切除した場合の再建だけでなく、乳房温存手術後も切除部分の形を自然に保つための工夫にも通じます。このような質の高い治療を実現するためには、乳腺外科と形成外科の緊密な連携が不可欠です。通常、乳がんの切除は乳腺外科医が、再建は形成外科医が担当しますが、乳腺外科医の切除方法によって選択可能な再建術も変わってきます。そのため、手術前から両科が密接に連携し、切除と再建の両面を考慮した治療計画を立てることが極めて重要です。再建方法には、インプラントなどの人工物を用いる方法と、患者さん自身の組織(腹部や背中の組織など)を使用する方法があり、それぞれ身体への負担や傷跡の位置が異なります。患者さんの病状や身体の状態だけでなく、職業やライフスタイル、さらには希望する乳房の形に応じて最適な方法を検討するためには、乳腺外科医と形成外科医がそれぞれの専門的見地から情報を持ち寄り、患者さんと共に選択肢を十分に議論することが不可欠です。